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骨粗鬆症と転倒

骨粗鬆症と転倒~骨折を防ぐための転倒対策

転倒に要注意!

骨粗鬆症になると骨は脆くなるため、骨折しやすくなります。高齢の方は骨折した部位によって、手術などで治療しても以前ほどは動けなくなるなどしてQOL(生活の質)が大きく低下してしまう可能性があります。厚生労働省が行った調査でも、「65歳以上の方が要介護者(※1)となった主な原因」として「骨折・転倒」の項目があり、女性でみると「認知症」に次ぐ割合となっています。

骨粗鬆症による骨折を招く原因の一つが「転倒」です。特にQOLに大きな影響を与える大腿骨近位部骨折(足の付け根の骨折)は、約8割が転倒によって起こります1)。また、骨粗鬆症による骨折が多い箇所として挙げられる手首、腕の付け根も、転倒して肩や腕をついたときに生じます。

※要介護状態である65歳以上の方。

転倒の危険因子

転倒の主な危険因子は年齢(80歳以上)、転倒の既往(転倒したことがある)、歩行能力の低下、特定薬物の服用、血清25(OH)D濃度不足(ビタミンDの不足・欠乏)などです2)
また、大腿骨近位部骨折を招く転倒の危険因子として、以下の4要素が挙げられます3)

これら4要素があって骨密度が低下している方は、いずれにも当てはまらない方と比較して大腿骨近位部を骨折する確率が5倍以上にもなります3)

筋肉量・筋力も転倒に関係しています。主に加齢によって全身の筋肉量と筋力が低下し、身体能力が低下した状態(サルコペニア)だと、転倒やフレイル(心身の働きが弱まった状態)、骨折の危険性が高くなります4~6)。ただ、筋肉量が十分でも変形性膝・股関節症といった関節疾患を抱えていたり、心肺機能が低下していると転倒してしまう可能性があります。

ちなみに、骨粗鬆症自体も転倒の危険因子となります。骨粗鬆症によって背骨の一部が潰れるように折れ、その状態を放置していると背中が曲がることがあります。背中が曲がっているとバランスを保ちづらくなって転倒の危険性が高まります。

転倒しないためにできること:身の回りを整えよう

転倒を予防するために身体面、環境面でできる対策を紹介します。

身体面

運動は筋力・バランス能力を維持・向上する上で重要です。また、骨密度の維持も目指せます。ロコトレやウォーキングなどを無理のない範囲で行いましょう。
食事面ではバランスのとれた食事を心掛けつつ、筋肉量をキープするために十分なエネルギーとたんぱく質、ビタミンDの摂取を意識してください。ビタミンDは転倒予防になるだけでなく、カルシウムの吸収を助けるため骨粗鬆症の予防にも欠かせません。ビタミンDは紫外線を浴びることで体内でも生成されます。適度な日光浴(1日15分程度)もお勧めです。1日3回の規則正しい、バランスのとれた食事も心がけましょう。

環境面

生活環境でできる対策は、室内と屋外に分けることができます。それぞれ注意するポイントをまとめました。

室内でできる対策

バランスを崩さないようにしよう

  • 起床時に立ち上がりやすいよう、寝床の高さを調整する。
  • 玄関や階段、浴室、トイレ、廊下などに手すりを設置する。

つまずかないようにしよう

  • 床に物を置かない。コード類は壁沿いや絨毯の下などにはわせる。
  • 部屋の一部に敷いてある絨毯やカーペットなどの縁が、めくれないようにする。
  • 廊下や階段は、足元が見やすいように照明をつける。

滑らないようにしよう

  • 靴下で歩くと滑りやすいので、滑りにくく安定感のある室内履きを履く。
  • 浴室の床を滑りにくい素材に変えるか、滑り止めマットを敷く。
  • 滑りやすい玄関マットやキッチンマットを敷かない。

屋外でできる対策

足元に気をつけよう

  • サンダルは避け、かかとまでフィットする靴を履く。
  • 歩きやすいように、柔らかく軽量の靴を選ぶ。
  • 道路のデコボコ、道路の段差、マンホールなどに注意する。
  • 滑りやすい雨や雪の日は、できるだけ外出を避ける。

転倒に備えよう

  • 手すりのそばを歩いたり、杖を使う。
  • 転倒時を想定して両手を使えるよう、リュックを活用する。
  • 手をふさがないよう、荷物を持ちすぎないようにする。

移動に便利な自転車にも対策

  • 故障や不具合がないか、こまめにチェックする。
  • 車輪に巻き込まれやすい服装は避ける。
  • 雨の日にはできるだけ乗らない。

1)Hagino,H.et al.Survey of hip fracture in Japan:Recent trends in prevalence and treatment.J Orthip Sci 2017;22:909-914
2)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会 編:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版.ライフサイエンス出版.2015,4.p48
3)Dargent-Molina P, Favier F,Grandjean H,et al.Fall-related factors and risk of hip fracture: the EPIDOS prospective study.Lancet 1996;348:145-9
4)Beaudart C,Reginster JY,Petermans J,Gillain S,Quabron A,Locquet M, et al:Quality o flife and physical components linked to sarcopenia:The SarcoPhAge study.Exp Gerontol 2015;69:103-110.
5) Spira D,Bunchmann N,Nikolov J,Demuth I,Steinhagen-Thiessen E,Eckardt R,et al:Association of Low Lean Mass With Frality and Physical Performance:A Comparison Between Two Operational Definitions of Sarcopenia-Data From the Berlin Aging Study.J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2015;70:779-784
6) Yu R,Leung J.Woo J:Sarcopenia combained with FRAX Probabilies improves fracture risk prediction in older Chinese men.J Am Med Dir Assoc 2014;15:918-923.

宗圓 聰 先生
監修医師
宗圓 聰 先生
そうえん整形外科 骨粗しょう症・リウマチクリニック 院長
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