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男性と骨粗鬆症

骨粗鬆症は男性もかかります!

男性もかかる骨粗鬆症

骨粗鬆症は女性に多くみられる疾患ですが、男性が発症しないわけではありません。推計1280万人いる患者さんのうち、300万人は男性(女性は980万人)で全体の4分の1を占めていますし、男性も女性と同じく高齢になるにつれ骨粗鬆症の有病率(人口全体に対して特定の疾患にかかっている人の割合)は増えていきます1)。男性も平均寿命が80歳を超えるなか2)、骨粗鬆症は健康な状態を保ち続けるうえで見過ごせない疾患です。

骨粗鬆症は糖尿病や慢性腎臓病なども原因に

男性は女性でみられる閉経がないため、骨量(骨密度)が急激に減少することは基本的にありません。それでも20歳ごろに最大を迎える骨量(骨密度)は、その後ほほ横ばいで推移し50代ごろから減少がみられます。男性で加齢によって骨量(骨密度)の減少がみられるのは主に骨形成(骨の新陳代謝の過程で起こる、新しい骨が作られること)の低下によるもので、骨梁こつりょう(骨を支える柱のようなもの)が薄くやせてきます。男性も70歳以降は骨量(骨密度)の減少が顕著で、骨折の危険性も増加します3)。加齢による骨粗鬆症は原発性骨粗鬆症といいます。

加齢以外で男性に注意してほしいのが、疾患や薬などが原因となって起こる続発性骨粗鬆症の存在です。続発性骨粗鬆症の原因の中には、骨の強さ(骨強度)を決めるもう一つの要素「骨質」を劣化させるものも含まれます。骨質が劣化してしまうと、骨量(骨密度)がそこまで減少していなくても骨が脆くなって折れやすくなることもあります。

続発性骨粗鬆症の原因として、糖尿病、原発性副甲状腺機能亢進症、性腺機能低下症、関節リウマチ、慢性腎臓病(CKD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ステロイド薬使用などがあります。糖尿病やCOPD、CKDは生活習慣病で中年期から高齢期にかけて注意したい疾患です。

骨粗鬆症による骨折は男性も要注意

骨粗鬆症による骨折は移動や着替えなどの日常生活動作(ADL)に影響を及ぼします。また、高齢になると筋力が低下したりバランス感覚が衰えたりすることで、骨折の要因となる転倒の危険性が上昇します。実際に、厚生労働省が行った調査で「65歳以上の要介護者等で介護が必要となった主な原因」の一つに「転倒・骨折」が挙げられています。

骨折した部位によっては、ひどい場合寝たきりや死亡につながる危険性もあります。実際に、大腿骨近位部骨折患者の10%が骨折後1年で死亡するとされ4)、大腿骨近位部以外の非椎体骨折でも死亡リスクは男女とも約1.7倍高くなるとの報告があります5)。男性の場合、女性よりも骨折後の予後(病気の見通し)がよくありません。ある研究結果によると、大腿骨近位部骨折後1年の死亡リスクは非骨折者に比べて男性で3.7倍、女性で2.9倍に高まることが示されています6)

男性の骨粗鬆症による骨折の危険因子は、年齢、低体重、骨折歴、両親の大腿骨近位部骨折歴、ステロイドの使用、飲酒、喫煙、低骨密度など、女性と同じです。男性の場合、喫煙者は非喫煙者と比べて骨粗鬆症による骨折の危険性が高くなるため注意が必要です。

男性の骨粗鬆症の診断・検査・治療

原発性骨粗鬆症の診断基準は、男性にも適用されます。

また、男性で骨量(骨密度)を調べる二重エネルギーX線吸収法(DXAデキサ検査)が有効とされているのは、70歳以上の人、もしくは50歳以上70歳未満で以下の危険因子をもつ人です7)。大腿骨近位部と腰椎それぞれで測定することが望ましいとされています7)

危険因子

50歳より前に骨粗鬆症が疑われる場合は続発性骨粗鬆症の可能性があるため、血液検査や尿検査などで原発性骨粗鬆症と区別します。

男性の骨粗鬆症治療は、女性と同じく薬物治療を基本に、食事療法と運動療法を並行して行います。骨粗鬆症の治療薬は女性に比べてエビデンスが乏しい面がありますが、女性とほぼ同じ治療効果が得られたと報告されているものもあります。

適度な運動やバランスの良い食事で骨粗鬆症を予防しよう

高齢になっても健康な体をキープするために、適度な運動やバランスの良い食事を心掛けてください。原発性骨粗鬆症だけでなく、続発性骨粗鬆症の原因となる生活習慣病の予防にもつながります。

男性で70歳を過ぎている方は、骨密度を測定してみましょう。また、若い方で続発性骨粗鬆症の原因に心当たりのある方は、主治医と相談するなどして検査してみてください。

1)Noriko Yoshimura, et al.J Bone Miner Metab 2009;27:620-8.
2)厚生労働省 令和3年簡易生命表の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life21/dl/life18-15.pdf
3)SzulcP,Garnero P,Marchand F, et al:Biochemical markers of bone formation reflect endosteal bone loss in elderly men—MINOS study.Bone36(1):13-21,2005.
4)Sakamoto K,Nakamura T,Hagino H, et ali.Report on the Japanese Orthopaedic Association's 3-year project observing hip fractures at fixed-point hospitals.J Orthop Sci 2006;11:127-34.
5) Bliuc D,Nguyen ND,Milch VE,et al.Mortality risk associated with low-trauma osteoporotic fracutre and subsequent fracture in men and women.JAMA 2009;301:513-21.
6) Haentjens P,Magaziner J,Colon-Emeric CS,et al.Meta-analysis:excess mortality after hip fracture among older women and men.Ann Intern Med 2010;152:380-90.
839)Watanabe R,Tanaka T,Aita K,et al.Osteoporosis is highly prevalent in Japanese males with chronic obstructive pulmonary disease and is associated with deteriorated pulmonary function.J Bone Miner Metab 2015;33:392-400.
7)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会 編:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版.ライフサイエンス出版.2015,4.p26
8)折茂肇監修,骨粗鬆症 検診・保健指導マニュアル第2版.ライフサイエンス出版.2014,6.p22

宗圓 聰 先生
監修医師
宗圓 聰 先生
そうえん整形外科 骨粗しょう症・リウマチクリニック 院長
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