知ってほしい骨粗鬆症とロコモの関係
骨粗鬆症はロコモの原因疾患の一つ
ロコモティブシンドローム(ロコモ:運動器症候群)とは、運動器(骨、筋肉、関節、神経などの総称)の障害のために立ったり歩いたり、階段を昇り降りするといった移動機能が低下した状態をいいます。ロコモの要因は様々で、運動器の疾患、加齢などによる運動器の能力の衰えなどが挙げられます。
運動器に障害が出た状態を放置してしまうと、痛みのほか筋力,バランス能や柔軟性の低下、関節可動域の制限など運動器機能の衰えが生じます。運動器機能の衰えは運動器疾患をさらに悪化させ、疾患の悪化がさらに運動器機能の衰えを招き、移動機能が低下していきます。その結果社会参加や生活活動は制限され、最終的に介護が必要な状態に至ることもあります。
骨粗鬆症は、変形性膝関節症、変形性腰椎症(腰部脊柱管狭窄症)と並んでロコモの主な原因疾患の一つです。骨粗鬆症を発症すると骨折による痛みや背中の曲がりで姿勢が変化するなどしてロコモにつながる可能性があります。ロコモが進行して移動機能が低下してしまうと、骨に十分な負荷がかからず骨粗鬆症が進行したり、転びやすくなって骨折したりする恐れがあります。また,大腿骨近位部(足の付け根)で骨折が起こると、寝たきりにつながる可能性が高くなってしまいます。
ロコモ予防が健康な状態の維持に
実際に、運動器の障害(「転倒・骨折」「関節疾患」)は65歳以上の方が要介護者(要介護状態である65歳以上の方)となった原因の一つとして知られています。
「人生100年時代」といわれる現代では、できる限り健康な状態を維持していくことが大切です。例えば2019年の平均寿命は女性87.45歳、男性81.41歳である一方、同年の健康寿命(人の寿命において「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」)は女性75.38歳、男性72.68歳となっています1)。つまり、日常生活に何かしらの制限が生じている期間が女性で12.07年、男性で8.73年もある計算になります。健康寿命をできるだけ伸ばすためにも、骨粗鬆症はもちろん、将来的に要支援・要介護の危険性を高めるロコモの予防が重要になります。
ロコモかどうかチェックしよう!
自分がロコモかどうかは調べることができ、その方法は「ロコモーションチェック(以下、ロコチェック)」と「ロコモ度テスト」の2種類があります。
1. ロコチェック
ロコモの可能性に気付くためのチェック法です。次の7項目のうち、1つでも該当項目があるとロコモの可能性があるとされます。当てはまった方はロコモ対策を始めましょう。
ロコチェック
7項目のうち、1つでも該当項目があるとロコモの可能性があるとされています。
①片脚立ちで靴下がはけない
②家の中でつまずいたり、滑ったりする
③階段を上がるときに、手すりが必要である
④掃除機の使用や布団の上げ下ろしなど、やや重い家事が困難である
⑤2㎏程度の買い物をして持ち帰るのが困難である
⑥15分ほど続けて歩くことができない
⑦横断歩道を青信号で渡りきれない
出典:【 日本整形外科学会:ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト ロコモオンライン 】
2. ロコモ度テスト
ロコモかどうかを判定するテストです。「立ち上がりテスト」「2ステップテスト」「ロコモ25」の3つのテストで判定します。各テストの結果がロコモ度1、ロコモ度2、ロコモ度3のどの段階に該当するかを調べます。
該当したロコモ度のうち、最も移動機能低下が進行している段階を判定結果とします。
どの段階にも該当しない方はロコモではありません。
ロコモ度1: 移動機能の低下が始まっている状態です。筋力やバランス力が落ちてきているので、ロコトレ(ロコモーショントレーニング)をはじめとする運動を習慣づける必要があります。また、十分なたんぱく質とカルシウムを含んだバランスの取れた食事を摂るように気をつけましょう。
ロコモ度2: 移動機能の低下が進行している状態です。自立した生活ができなくなるリスクが高くなっています。特に痛みを伴う場合は、何らかの運動器疾患を発症している可能性もありますので、整形外科専門医の受診をお勧めします。
ロコモ度3: 移動機能の低下が進行し、社会参加に支障をきたしている状態です。自立した生活ができなくなるリスクが非常に高くなっています。何らかの運動器疾患の治療が必要になっている可能性がありますので、整形外科専門医による診療をお勧めします。
3つのテストのうち、最も重いロコモ度があなたのロコモ度になります。
例:立ち上がりテストがロコモ度2、2ステップテストがロコモ度1、ロコモ25がロコモ度1の場合→ロコモ度2
立ち上がりテスト
垂直方向への移動機能を調べるテストです。異なる高さ(40・30・20・10cm)の台に座り、腕を胸の前で交差させた状態で両足、もしくは片足で立ち上がり3秒間静止できるか確認します。両足で40cmをクリアできたらどちらか片方の足で同じ40cmに、それもできたら反対側でチャレンジします。左右の片足どちらもクリアできたら、次はどちらか片方の足で30cm…と進めていきます。左右の片足どちらかで失敗した場合、そこでテストは終了です。もし片足40cmができなかった場合は、両足でできる高さまで挑戦してください。
出典:【 日本整形外科学会:ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト ロコモオンライン 】
ロコモ度1: どちらか一方の足で40cmの台から立ち上がれないが、両足で20cmの台から立ち上がれる
ロコモ度2: 両足で20cmの台から立ち上がれないが、 30cmの台から立ち上がれる
ロコモ度3: 両足で30cmの台から立ち上がれない
2ステップテスト
水平方向への移動機能を調べるテストです。スタートラインにつま先をそろえ、できる限りの大股で2歩歩き、2歩分の歩幅を測定。その歩幅を身長で割った数値(2ステップ値)で、ロコモ度を確認します。
出典:【 日本整形外科学会:ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト ロコモオンライン 】
ロコモ度1: 2ステップ値が1.1以上1.3未満
ロコモ度2: 2ステップ値が0.9以上 1.1未満
ロコモ度3: 2ステップ値が0.9未満
ロコモ25
運動器の症状や状態、日常生活の動作に関する25個の質問に回答することで、ロコモの進行度合いを調べます。
【ロコモ度テスト】
この1ヵ月の身体の痛みなどについてお聞きします。
0点 | 1点 | 2点 | 3点 | 4点 |
---|---|---|---|---|
0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
合計 |
---|
0 |
合計点 7点以上:ロコモ度1 16点以上:ロコモ度2 24点以上:ロコモ度3
移動機能の低下が始まっている状態です。
筋力やバランス力が落ちてきているので、ロコトレ(ロコモーショントレーニング)をはじめとする運動を習慣づける必要があります。また、十分なたんぱく質とカルシウムを含んだバランスの取れた食事を摂るように気をつけましょう。
移動機能の低下が進行している状態です。
自立した生活ができなくなるリスクが高くなっています。特に痛みを伴う場合は、何らかの運動器疾患を発症している可能性もありますので、整形外科専門医の受診をお勧めします。
移動機能の低下が進行し、社会参加に支障をきたしている状態です。
自立した生活ができなくなるリスクが非常に高くなっています。何らかの運動器疾患の治療が必要になっている可能性がありますので、整形外科専門医による診療をお勧めします。
出典:【 日本整形外科学会:ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト ロコモオンライン 】
ロコモティブシンドロームの予防・対策
ロコモの予防・対策は主に習慣的な運動、適切な栄養摂取、運動器の障害の予防になります。既に運動器疾患がある場合は、その治療も必要です。
予防・対策に取り組む際は、ロコチェックやロコモ度テストで自分がロコモなのか、またはどの程度ロコモが進行しているかしっかり把握してください。もしロコモ度が2以上の場合、運動器疾患を抱えている可能性があります。その状態で運動するとかえって運動器を傷めてしまい、疾患の悪化につながります。
ロコモはきちんと対策すれば、運動器の障害を軽減させることができます。しっかり取り組んで歩ける体を保って健康寿命を伸ばしていきましょう。
運動
ロコモ予防や改善のためには「ロコトレ(ロコモーショントレーニング)」が有効です。ロコトレは「片脚立ち」と「スクワット」の2種類です。無理のない範囲で行っていきましょう。
スクワットができない場合は、イスに腰かけ、机に手をついて立ち座りの動作を繰り返す。机に手をつかなくてもできる場合は、腕を前にかざして行う
出典:【 日本整形外科学会:ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト ロコモオンライン 】
食事
肥満は膝や足腰に負担をかけ、やせ過ぎは筋力の低下や骨粗鬆症のリスクを高めます。1日3食バランスの良い食事を心がけましょう。筋力や骨強度の維持・向上はロコモおよび骨粗鬆症を予防する上で重要ですので、タンパク質やカルシウム、ビタミンD、ビタミンKなどは十分に摂取しましょう。また、エネルギー不足に陥らないためにも炭水化物や脂質を控え過ぎないことも意識してください。
1)厚生労働省 資料「健康寿命の令和元年地について」(https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000872952.pdf)(2022年12月7日アクセス)